
読み終えたときに思い出したのは、10年近く前の記憶。
本屋の接客時間は、平均5分くらいで、早ければ数10秒だし、長くても15分くらいだと思う。
そんな短時間のコミュニケーションのなかで、ときどき宝物みたいな「気づき」をもらえることがある。
おじいさんは、「色」に関する本を探していた。
一年にひとつテーマを決めて、勉強をしているのだという。
誰に教わるでもなく、自分で資料を探して、自分で掘り進めていくらしい。
「これまでにな「仏像」「仏教」「源氏物語」ときて今年は「色」やねん」と嬉しそうに話してくれるおじいさんに心の底、腹の底から尊敬の念を覚えた。こんな大人になりたい!
このおじいさんについて、一年にひとつ知識という「静」を身につけると表現するならば、
著者については、生業という「動」を身につける、と表現したい。
生きていくのにリアルに必要な「すべ」だ。
「人生の豊かさ=慎ましさ、他者を思いやる、自分を認める」
のように慈愛にみちた内容の本は、私には眩しすぎて、逆におちこむ。
「人生の豊かさ=結局お金はやっぱり必要だよ」
のように「1年で誰でも年収1000万円」みたいな本はタイトルだけで疲れる。
この本は、絶妙な温度で「人生の豊かさ」についてアプローチしている。
わたしはとっても面白かったし、自分の未来がとても楽しみになった。
とりあえずまずは、「床張り」をしてみたい。
これを読んで、「床張り」ワークショップしてるよ!という京都近郊のかた、
いらっしゃったら誘ってください。
ISBN 978-4-480-43455-5
発行元 筑摩書房